雨季
山中 烏流




(錯乱した雨模様に捧ぐ)






街が忙しい
夜が忙しい
昼も当然に忙しく
つまり、私は忙しい



肩と肩がぶつかる
前に、傘とカッパの擦れる音がする

自転車から滴る水滴と
足元で飛沫と化す水溜りのことで
一日が終わる




下着の透けた女性を
後ろから、男性が目で追いかける
傘を振り回して遊ぶ子供の横で
私は
控えめに、舌打ちをする





音を楽しむ余裕と
増水した川を楽しむ心は、違う

蟻の巣が水没したことを悲しむ私は
綺麗を好んでいるだけで
それ以上を求めることは許されていない、加えて
傘の色を気にできるほどの余裕すら
持ってはいけないことになっている






(雨に打たれるのは、好き)










自由詩 雨季 Copyright 山中 烏流 2010-09-24 04:02:50
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