閉口
山中 烏流


がらん、としてしまった
食卓の上には
先程まで
私の口を喜ばせていたものの
抜け殻があって

半分
より、少し多い量を
残してしまったスープは
冷静な目をして
こちらをじっと見つめている

裸のまま、揺れている


レンゲを動かすと
ゆらゆらと波打つから
女のように
熱でも帯びれば、面白いのだが
当然の話
そんなことは、一度も無い



いつだったろうか

「ご馳走様」を言いそびれてから
もう、随分と
経ってしまった










自由詩 閉口 Copyright 山中 烏流 2010-09-22 04:02:43
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