ひとのひ
海里

西の国での日没は遅い
けれどもやがて
海にも陸にも火がともる

夕闇の中
黒々と大きなシルエット
あれは火力発電所

もう止められて久しいけれど
取り壊されない
原発に何かあった時には
太古の植物たちを
いつでもまた燃やせるように

宵の空にようやく見えて来た星々
あれは原子の火
今ではひとも灯せるようになった熱い光

星まで行こうというなら
原子の火も必要だろうね
直接には使わなくても

わたしの体の中の生命は
わたしが食べたものを燃やして生きている

生き物が生きるときの燃え方で
燃やし方で

 
「草冠とレインクラウン」より。


自由詩 ひとのひ Copyright 海里 2010-09-21 21:05:52
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