はずだけど
砂木
捜してきます と書いたメモを
台所に置いて 家を出た 午前三時
まだ 真っ暗な道をひたすら運転する
公園 飲み屋のある所 よくわからない道
夫が 電話のひとつもよこさないで
友達と飲んでくると言ったきり帰ってこない
若かったまだ新婚の私には理解できなかった
浮気だろうか 嫌われたんだろうか
今なら ただの酔っ払いで片付けられる事が
一人で帰りを待つ身にはたえられず
同居する義父母らにメモを残して捜しに行った
捜すといっても あてがあるようでない
聞いたお店にはもういないだろう
どうしたらいいのかもわからずに
田舎の道路を ただ運転して歩いた
結婚して名前を変え 生家もでたのに
信じている者に裏切られた気分だった
ひたすらあてもなく運転し続けた
とぼとぼとして 実家に行くと父母に叱られた
婚家に電話を入れて お昼前には婚家に戻った
夫は帰って寝ていた
夫の家族にも こんな事するなと言われた
目覚めた夫には 馬鹿じゃないかと笑われた
しかし夫も 父母に怒られた
他家で暮らす事も 夫がいることにも
慣れないで 感情をコントロールし損ねてばかり
夫とはよく大喧嘩もした よくも私をぶたなかったな
もう中高年になり 若い頃のように
ストレートではなく それなりの策を持ち
生活を裏からコントロールしていきたいものだけど
夫が何気なく言う お前は気持ちがすぐ表に現れると
そんなことはないはずだけどもしそうなら
それならどうするか考えるから そう思っておいて
暗い道の運転技術は 腕があがっているはずだから