余愁の水割り
アラガイs
夕飯後の消化不良を酒で紛らわす
夜長だね。
こんなとき薄い水割りはいくら飲んでも酔うことはない
(ちっ ‥いやな奴らだ )
考えれば 考えるほど孤立した理由に腹が立つ
(まったくイジメだよ )
台所の椅子で両手を頭にすると
水割りの黄金色が増してくる
イジメを思うと僕には何故かいつも浮かぶ景色が二つある
髪の毛の長い義足の少女が
誰かを追いかけてゆく
短くて骨のような片足を引きずりながら
片手に箒を振り上げて
必死の形相で追いかけてゆく
よくからかわれていた
顔ばかり大きなあの少女
いつだったか死んだと聞いた
義足の同級生
名前も忘れ
話したこともない
けれど何故か甦るあの教室
あの姿
酔えば思いだす
家が貧しかった女の子
制服はしろく汚れ
ボサボサの長い髪の毛に老け込んだ皴顔
何故か女子でも
あの娘だけは先生によく打たれていた
やって来た母親が
涙を流しながらイジメた生徒を叱る
その姿がいまでも忘れられない
随分まえに結婚して
子供が二人いると誰かから聞いた
思い起こす度
悪戯な僕は彼女たちを虐めなくてよかったと安堵する
( ちっ 大人も子供も変わりはしない )
あと二杯くらいにしとくか
秋の夜はまだまだ長い