菜の花
黒田康之
高速バスに揺られて
レモンチューハイをお前は口に含んだ
すぐに
朝焼けみたいに
お前の喉元から顔にかけてが
赤く
紅をさしたみたいになった
「まるで祭りの御稚児さんだ」と僕が笑うと
「飲ますからだよ」と膨れ上がった
目元は笑って
とても眠そうな顔
黄色い小さな花模様が
お前のシャツの上で笑った
もうすでに僕は何を食べるかを決め
大きな公園の前で
僕とお前は水餃子を食べた
もちもちの皮の中には肉汁が溢れていて
僕たちの口の端しから
言葉のように
滲むように垂れた
肉団子
菜の花炒め
東坡肉
お前は微かに口を開き
僕の目を盗むように
満腹になった
目尻がさがった幸福なお前の顔を
僕は今日まで待っていたのだ
体の奥に愛しかない
お前のような女の
この笑顔を待っていたのだ