夏の終わりに
朽木 裕

貪ることは生きること。

あの光りの向こうに僕の意識は分解されて、
あぁ夏が終わる。

しゃり、と踏んだ砂浜に手を翳しても弱まらない陽射し。
ぶよぶよとたゆたう海が行きつ戻りつを繰り返す。
邪気のない子供の声が近くで遠くで反響して。

命を産んだ夏が逝く。

遺影のアンタはなんでそんな顔をして笑ってる?
笑顔なんて、見たこと一度もなかった。
香の匂いが纏わりついて残留思念みたいな煙。

死に生が絡みついて離れない。

潮風。喪服の群れ。長い坂道。

足下の死んだ蝉を蟻がゆっくり運んでいく。


自由詩 夏の終わりに Copyright 朽木 裕 2010-09-16 01:00:10
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