夏の終わりに
朽木 裕
貪ることは生きること。
あの光りの向こうに僕の意識は分解されて、
あぁ夏が終わる。
しゃり、と踏んだ砂浜に手を翳しても弱まらない陽射し。
ぶよぶよとたゆたう海が行きつ戻りつを繰り返す。
邪気のない子供の声が近くで遠くで反響して。
命を産んだ夏が逝く。
遺影のアンタはなんでそんな顔をして笑ってる?
笑顔なんて、見たこと一度もなかった。
香の匂いが纏わりついて残留思念みたいな煙。
死に生が絡みついて離れない。
潮風。喪服の群れ。長い坂道。
足下の死んだ蝉を蟻がゆっくり運んでいく。