羊飼いになれなかった少年
相馬四弦

廃水路の脇で露店を開いた少年

流れてくる生首を拾い上げては

木槌で叩いてぺたんこにする

それをシャツに貼り付けて売ると

結構な稼ぎになるのだ



だけどアイツは羊を追えない

だけどアイツは羊を追えない

誰もが少年を馬鹿にする

知ってるさ 年頃の男はみんな

あのふわふわでジャケットを作って

皮のブーツを履いて戦場に行くんだろ



あるとき拾い上げた麻袋の中に

街でも有名な美少女の首をみつけた

かわいそうに せっかくだから

その綺麗な鼻筋を壊さないように

横顔のアップリケにしてあげよう



そして大人達は罵り始めた

そして少年は首を落とされた

誰もが少年を馬鹿にする

いいのさ 年頃の男はみんな

犠牲の上にのどかな牧場が広がっているなんて

理想の下でどれだけの羊が怯えているのかなんて

まさか

自らの骸の中で死んでいくものなんてありはしない

そんな現実に毛ほどの価値もないから

ただ僕の首を叩くときは横顔にしておくれよ

そうして気長に

彼女と向き合える日を待っていたいんだ







自由詩 羊飼いになれなかった少年 Copyright 相馬四弦 2010-09-15 16:48:46
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