瓶天
木立 悟
からだがからだを残して震え
雪のはじめのひとかけらを知る
もういちどの無い
もういちどに咲く
底まで呑まず
わずかに残る空を見つめる
青は低く
灰より遠く
雨の前に
空をかかげる
空をとおし
雨を見つめる
森が森をまわりゆく
動かぬ空の 同心円の
まわる枝の
まわる羽の
灰緑の中心
冬の中心
渦のなかを
歩いている
水の前で 鏡の前で
言葉は消える
刹那と刹那 残すもの無く
言葉は前を去ってしまう
一枚の絵
ひとつののぞみ
静かにふせる灯
かわいた血の跡
嵐を梳く指ごとに
冷たさはまた冷たさになる
足首を去る砂の楽団
後方へ後方へ奏で放つ
空をかかげ 夜をかかげ
硝子の手から硝子の手に
ひとつと無数に降るものを見る
あらゆる底へと降るものを見る