花びらの人
Akari Chika

痛みはすぐそこにあったのかな

勇気が要るね
地平の向こう側  踏み出すときが来た
なのに  足がすくんで
一歩も動けない

誰か手を貸して
帰りたいよ  My Home
今はもう焼け落ちた
白い壁の一軒家

赤い花  青い屋根
木のにおいがするブランコ
さびた門をくぐると
家族の声がした

会いたいよ  もう会えない
懐かしい人
手を握ると涙が止まる
不思議な力を持った人

愛してよ  もう愛されない
唯一の人
ピアノの音のような
優しい声を持った人

庭に咲く  朝顔の露
そのしずくが落ちたとき
すべては消えて  失くなった

誰か手を貸して
帰りたいよ  My Home
今はもう焼け落ちた
白い壁の一軒家

階段をのぼる
ささいな物音に驚いて
窓辺の小鳥がはばたいた

陽の光に
どれだけ慰められただろう
雨の日に
どれだけ悔やんだことだろう

10年後  20年後
誰かの隣で笑えてる?
誰かの優しさに甘えられる?

こんなに人生は長い
でも一瞬のような気もする
エンドロールに流れる
自分の名前を見つけたとき
小さくピースが出来ればそれで良い

寂しさは何の為にある?
この心を壊すため
この心を試すため
違う
寂しさは歓びを運ぶ為にある
そう思いながら
今も寂しくて泣いている

誰か手を貸して
帰りたいよ  My Home
今はもう焼け落ちた
白い壁の一軒家

笑ってよ  もう笑ってくれない
最愛の人
時を愛でるように
儚く散った花びらの人


自由詩 花びらの人 Copyright Akari Chika 2010-09-13 15:26:34
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