雨が身体に
……とある蛙


歩き疲れて立ち止まる
道に雨が降り出して
静かに静かに降り出して
道に輝く石畳
次第に次第に濡れてくる
並木の青いプラタナス
静かに静かに濡れてくる

歯を食いしばり空を見る
見上げた空は鈍色で
雨が顔に振り落ちて
次第に次第に顔濡らす
確かに雨は降っていて
見上げた顔に雨が降る。
静かに静かに顔濡らす

雨で濡れてるはずなのに
眼が濡れてるのは雨でなく
違うもので濡れている
視界が滲んで辛いのは
今降り出した雨のせい?
いやっ
降り出した雨のせいじゃない。

笑顔を無理に作っても
雨が顔を濡らすので
寒くも無いのに凍てついて
心の中も凍てついて
そのまま雨に立ちすくむ。


静かに静かに雨が降る。
雨がしとしと体を濡らす。
自分の孤独と後悔が
辛く煩わしい思い出と
一緒に次第に流れ出し、
心が次第に空になり、
軽く済んだ空になる。


そして、雨が上がった時に
ぽっかり浮かんだ雲を見て
心の
次第に萎えた自分の中に

また歩きだす勇気が
沸いて来る。静かに静かに沸いてくる。


自由詩 雨が身体に Copyright ……とある蛙 2010-09-13 14:45:26
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