ミラー
Akari Chika

夜からは逃げられない
街に降り注ぐ  煙草の吸いガラの雨からも
見上げて立ち止まる人の  夢を汚す

雨からは逃げられない
傘を差してすれ違うときの  憂うつなドラマからも
なぐさめにもならない言葉を  吐き捨てた

ストローの中を通り抜ける
声にならないさみしさを
コップの底の氷みたいに
跡かたもなく  溶かしてしまえたなら

車のライト  またたく間に  消えてく
ネオンの海  まばたく間に  引いてく

もう涙も出ない  駆けあしの行く先も知れず
頭の地図の切れ端を握りしめた

パールのほどけた音
粒に映る自分の顔  まぼろし  本物はきっと一粒だけ

街路樹の脇  行き交うバス
裸の愛しさがまだ  見つからない

スクリーン越しに触れた手の熱さが
あまりにも情熱的で
今も  冷めてくれないよ

満ち足りた潮のように
残像の波間に  たゆたえたなら

こうしていたいのに  このままずっと  こうして
ミラーの表面に鼻をつけて
存在を確かめていたい
このままずっと






自由詩 ミラー Copyright Akari Chika 2010-09-12 14:45:06
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