ミラー
Akari Chika
夜からは逃げられない
街に降り注ぐ 煙草の吸いガラの雨からも
見上げて立ち止まる人の 夢を汚す
雨からは逃げられない
傘を差してすれ違うときの 憂うつなドラマからも
なぐさめにもならない言葉を 吐き捨てた
ストローの中を通り抜ける
声にならないさみしさを
コップの底の氷みたいに
跡かたもなく 溶かしてしまえたなら
車のライト またたく間に 消えてく
ネオンの海 まばたく間に 引いてく
もう涙も出ない 駆けあしの行く先も知れず
頭の地図の切れ端を握りしめた
パールのほどけた音
粒に映る自分の顔 まぼろし 本物はきっと一粒だけ
街路樹の脇 行き交うバス
裸の愛しさがまだ 見つからない
スクリーン越しに触れた手の熱さが
あまりにも情熱的で
今も 冷めてくれないよ
満ち足りた潮のように
残像の波間に たゆたえたなら
こうしていたいのに このままずっと こうして
ミラーの表面に鼻をつけて
存在を確かめていたい
このままずっと