オベリスク
AB(なかほど)

砂漠

飽和湿度に近い街で
渇いた自分を見ている
店のガラスだけではなく
道行く人々の顔にも
同じような表情が広がって
だから
ときどき
父や母の顔を思い浮かべる
のだろう





君が掴もうとしているものは
手を伸ばせば
もうすぐ届くのかもしれない
僕が望むものは
目を閉じればいいだけで
この子の寝顔のように
君たちもその手に持つものを置いて
目を閉じれば
いくつもの星は語りだす



即興詩人

平日の
中野の公園で
即興詩人が時間をつぶしている
私に命題すれば
あなたの望む世界を見せる
と言うので
あなたのために詠ってください
と苦笑いで
通り過ぎた
そんな僕自身も
即興詩人だ



オベリスク

白く光りながら聳え立つものを
世界中の偉い人が建てて
それを平和とか繁栄とか協調とか
いろんな言葉で愛している
見上げるその人たちの目には
横たわる人影は見えない
それでも僕は僕自身で
君は君自身で
立ち上がっていける
と信じている



ヌト

喉の渇くものたちには
雨と影を
心の渇くものには
星空を
やがて
眠りの後で
立ち上がろうとするものを
優しく包みこむ
はじまりにもあった
とても大きな優しさで





  


自由詩 オベリスク Copyright AB(なかほど) 2010-09-11 15:43:16
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