ふあんな街は犀の背中にのっている
石川敬大
オタマジャクシが
ぼくのまぶたの裏側に棲みついてしまった
けれど、だれからもみえない
ぼくにも
影の輪郭しかみえないが
たしかに棲みついて動きまわっている
*
あまりの暑さに逃げ込んだ
ショッピング・モールの四階駐車場からでもみあげるほどに高い
ツインの高層マンションが
この街のシンボルだとして
この街はオタマジャクシではない
オタマジャクシは
この街をプランニングした
デザイナーの頭のなかにいたはずだ
どこからかあらわれて頭のなかをしきりに蠢き
やっと静かになったカタチが
この街なのだ
この街はいっけん堅労である
獰猛な自然からコンクリート人工物で護られている
樹木や雲みたくにはうろつきまわらない
夏の暑さにもどこへも逃げていかなかったほどには忍耐力もある
でも
ときどきの
グァラングァラン
小刻みなユッサユッサの
この大地の脈動はどうしたことだろう
*
ぼくは妄そうする
絵画のなかで静止したオタマジャクシが
ふたたび蠢きはじめたのだと
プランニングしたデザイナーはもういないけれど
オタマジャクシは街の地下にいて蛙になる日をまっている
あるいは
鎧におおわれた
この街を背にのせた犀を追いたてていると