アンバランス
nonya


平日は
ぎっしりと湿った砂が詰まった頭に
素敵な大人のお面をつけて
行列の最後尾で傾きながら
特別快速の通過を待っている

休日は
いっこうに衰えない逃げ足に
穏やかな家庭人のジャージをはかせて
地上デジタル波の端で傾きながら
アナログなTVの嘘を聞き流している

ときどき
傾いていることが無性に嫌になって
手探りで真ん中を探してしまう
喜怒哀楽の遠心力に逆らって
揺るがない自分を求めてしまうけれど

なかなか
真ん中が見つからなくて
自分の夕暮れの中で途方に暮れる
見つかるはずなどないのだ
自分の空洞の広ささえ知らないのだから

本当は
僅かに傾いているのが世界だから
背筋を真っ直ぐに伸ばしても
朝と正対なんかできない

本当は
微かに揺れ続けるのが自分だから
どんなに目を凝らしても
夜明けすら見極められない

今日も
素敵な大人のお面をつけて
穏やかな家庭人のジャージをはいて
湿った砂袋は逃げ足を磨く

磨きながら傾く
磨きながら揺れ続ける
程好い居心地の悪さの中で
居心地の良い不安定の上で




自由詩 アンバランス Copyright nonya 2010-09-11 10:32:25
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