寛ぎはじめた九月
小池房枝

高くばかり吹いていた風降りてきて翻る葛の葉裏の白さ

金も銀もまだ咲いてません少なくもこの風が来た道の限りは

せいせいと水色の空の低いとこに三日月そっとすくっと立ってる

西はイリ東はアガリ太陽ティダの通るとおりに呼べば今年もミーニシ

金色の秋の夕日は人影をも金に縁取ることを止めない
 

無限遠で交わることが平行の証ヒトにも二つの眼差し

ペガサスの窓が開けば東にはオリオン天の赤道を告げよ

冬星が幅を利かせてる東天に寄り添いあって頼りなげスバル

星屑は最微等級以下無限フォーマルハウト一つ星がゆく


エリス我は讃える不実な和合より不和もて我らを未知へ導け

親しんだ既知打ち壊して新たなる宇宙を拓け争いの女神


カメ様が作った世界の内側にひとがいるのね天蓋背甲

カメ様はとってもおっきな方舟でみんなを中に抱えているのね
 
太陽が一族郎党引き連れて驀進中です。けれども何処へと?

光そは闇の左手 暗闇は光の右手 天地開闢
 
媒質エーテルの中を光が進むようにくるくる地球が十二月じゅうにつきをゆく


空が深呼吸しているゆっくりと吐く息の辺り雲が消えてる
 
トビウオをペットにしたいな広い海と広い空とが必要だろうな
 
ぐりとぐらどんぐり探しに行く森の地下ではCERNがグラビトン探し

月からの距離真っ直ぐに落ちて来て月光電信柱に砕ける

空の底私たちへと降り注ぐ月日星総て堕天の光


雲の上で遂行されつつあるらしい夕焼けが気配だけで残念

熱風がやっと普通の風になって薔薇のそば薔薇の香りが動いた

虫の音の満ち潮に乗ってオリオンが漕ぎ寄せる九月ちりりちりりり

ゆうべ君が琴座のあたりでヒットした火球を見ましたマイナス5等

翼だけの大きな鳥の姿して天高く秋が渡って来ました


短歌 寛ぎはじめた九月 Copyright 小池房枝 2010-09-10 20:28:05
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