笛吹き
ヨルノテガム








 笛を吹いて
 雲海を渡る
 太陽ばかりの空を旅した
 何処かの山肌を眺め
 草原は遥か



 笛を吹いて
 湿原の広がる
 空を反射させる光の伝言を受けた
 四本足の野生動物と束の間
 目が合い、そして別れる



 笛を吹いて
 煮えた釜で蠢く
 鬼たちの重なる咆哮を聞き
 伸ばしてくる手に地獄の所在を尋ねると
 下を指差す



 笛を吹くと
 夕日が涙でにじむように
 円形を崩した
 この場面、初めてなのに
 遠い日に見たことのある気が強く・・



 笛を吹いて
 都会の夜景のネオンの瞬きを
 両目に随分集めた
 海へ去ると
 街は暗闇に飲まれるように小さく



 口笛を吹くと
 その迷う音色を聞きつけて
 笛が予感する場所へ連れて行ってくれる
 そうしてワタシハ
 線のように流れていった
















自由詩 笛吹き Copyright ヨルノテガム 2010-09-10 04:02:48
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