ねじ式変身
……とある蛙

産婦人科の女医の
知り合いもいなければ
メメクラゲに左腕を噛まれた
覚えもありません。
しかし、左腕が痺れてます。

左腕の痺れは
ネジの絞めすぎだと
何かの本に書いてあったので、
ネジを緩めれば痺れが取れると
勝手に思って
試しに緩めようとしましたが、
本に書いてあったネジが
そもそもありません。

身体を捻れば、
絞めすぎのネジが緩むこともあろうかと
無理な形で寝てみたら、
海老反っくり返った身体の
端から
漣のような痺れが
身体全体に拡がり
分けもなく慌てふためいて
分けはあるのですが、

たすけてくれ〜

等と叫ぼうとしたのです。

しかし、唇も舌も痺れてしまっていて
ほーほーほーほー

むしむしした暑さと一緒に
身体が丸まってしまいました。

何時間経ったのか
何十時間経ったのか
何日間経ったのか
何十日間経ったのか

唇は乾ききって罅割れ
何処が口なのかギザギザになってしまい
棘だらけの管のようになっていて
自分では何処が口なのか分かっても
他人には理解できないような感じに成っています。

手足はやせ細ってやはり罅割れで
ささくれだって節々は膨れているが
手足より丸くなって
罅割れのためトゲトゲした関節の方が太い
爪は鍵状に丸くなって反っくり返り
硬い

頭髪な抜け落ちているが疎らに剛毛が生えています。
背は中華鍋を伏せたように丸い。

実際声を出そうにも
しゅーしゅーしゅーしゅー
息が漏れるだけです。

自分がどんな生活をしていたか思い出せません。
布団はぬるぬるした体液でべっとりしていて
心地よい。しかし、左腕は痺れたままです。
でも腹が減っている
何か食わねば。
何か食わねば。
この形で生きて行くにしても。



自由詩 ねじ式変身 Copyright ……とある蛙 2010-09-09 09:40:49
notebook Home 戻る