ホットジュピター
小池房枝

うすら寒い夜にはホットジュピター
地球人はずっと宇宙人を探していたので
まず宇宙人のいそうな星を探すことにしました

ぼんぼこ燃えてる恒星よりは
生命体には惑星だろうと
まずはカニ座の55番星とか
おおぐま座47番星とか
ひとつひとつの星について
惑星があるかないかわかるかなと研究を始めたのでした

観測は困難を極め
地球は宇宙に孤独の存在なのかと/存在なのだと
学会は次第に悲観と絶望の様相を呈し
けれどそれでもやがてやっと天文学者たちは
自分たちのデータの中に惑星の徴候を見い出します

そうして発見されたのがホットジュピター
木星の数倍もある巨大な異型の惑星が
中心星に対して至近距離を
つまり太陽系でいうなら水星よりももっと内側を
何年でも何ヶ月でも何週間でもなく
たった数日でぐるぐるぶんまわっているという
しゅーしゅー音を立てていそうな惑星だったのでした
近ければ近いほど暑いですしね

新たな発見が新たな謎を呼ぶのは科学の常
ホットジュピター
最初からその位置で生まれたはずはなく
身内との材料の取り合いの都合から考えても
もっと外側で生まれてから内側へと移動して来たはず

新たな発見が新たな謎を呼ぶのが科学の常
ホットジュピター
生まれた後だんだんに中心星にむかって落ちて来たのであれば
では逆に今、ぎりぎりで踏みとどまれているのは何ゆえなのか

エキセントリックプラネットという
超・長楕円軌道を描く別タイプの惑星たちも続々と観測され始め
タイプ?惑星落下モデル
タイプ?惑星落下モデル
スリングショットモデル
ジャンピングジュピター

系外惑星形成理論は昨今
太陽系内惑星形成理論も含めてとても賑やか

カクテルの名前にしてもいいと思う
ホットジュピター
ジンをベースに
ニュートン力学の復活を記念してシードル

カント・ラプラスは星雲説を唱えたけれど
恒星同士のディープインパクト、遭遇説もあったから
トロピカルドリンクよろしく
花火で火花もね

太陽系を
惑星や準惑星や小惑星たちを生み出した原始太陽系円盤を
UFOと呼んでもいいと思う
未確認飛行物体なのだから

分子雲コア
周連星円盤
周恒星円盤
宇宙という母なる海に
恒星=惑星系の母体たるもやもやUFOが
くらげなすただよえるがごとく漂っているわけですから


自由詩 ホットジュピター Copyright 小池房枝 2010-09-08 23:12:11
notebook Home