そういうひと
鵜飼千代子
あつかましいとか
じぶんをしらないとか
いうことだけはごたいそう
とか
いろいろなことばで
だれかのかたちを
なぞることは
たやすいけれど
そういうひとなんだとおもいます
と
いうことばは
とてもべんりで
あたたかくて
つめたい
だれかのなにかが
だれかのすべてでは
ないけれど
そういうときに
そういうことをする
そういうひと、
なんです
って
いうことは
ほんとうだから
こわいし
かなしい
じぶんのおりにしまいたくて
だれかのじゅうばこのすみを
つつくのを
なりわいにしてる
そんなひとの
はきすてることばに
そういうひとなんだとおもいます
と
わたしは
よくいう
そういうひとなんだとおもいます
そういうひとなんです
と
だれかにも
じゅうばこのすみつつきにも
きょようと
きょぜつを
どうせきにして
そういうひと
なんだとおもいます
ほかにことばがみつからないから
わたしはそう
いうのだろう
べつのことばをさがしてまで
おべんちゃらをいうことも
ないだろし
あおることも
ないだろう
そう
すきなひとも
きらいなひとも
どうだっていいひとも
そうして
かんじんなわたしも
よくもわるくも
〈 そういうひと〉
なのだろう
1999.08.05. YIB01036 Tamami Moegi.
初出 NIFTY SERVE FPOEM
筧槇二氏、諌川正臣氏に献上した 限定2部 小詩集「水平線」に収録