遠透季
木立 悟
最初の雨の火に焼かれ
槍や矢の血の頬を娶い
色なき泡を
曇へ放ち
海を消す火
ひかり鳴る海
寄せる片目
まばたきの波
黒円が重なる
白濁が白濁を射抜く
うしろにまわる手
はばたいてもはばたいても浮かばぬ手
光の虚ろの蜜の上を
光のまだらをめあてに歩む
白や青やはらわたや無
洞のように響いている
黒い蝶 双つに分かれた
黒い蝶
紙の山から
飛びたちぬ
望まぬしるしを受けながら
望まれぬものを抱いている
花の陰をゆくつばさ
はざま結ぶ火のつばさ
雨の光が光ではなく
さらに透る何かとなり
雨を雨に置いてゆく
さらに遠く 置いてゆく