刈取り農夫
西天 龍

いまは夏でも秋でもありませぬ
軌道上のリセットスイッチを
昨夜、弾きましたゆえ
どうぞ、お持ちの未練など
そこな小川で流しなされ
間もなくこの野にも人が溢れますゆえ
どうぞ、お急ぎなされ

すべての夜が明けまする
あの山の端に日が昇る
ほんのわずかなの間だけ
せいぜい水に流しなされ
ムクゲは今が盛りなれど
明日は咲かずに落ちまする
火照りの余韻に浸るのも
今日を限りになさいませ

早起き農夫の戯言は
草取る背中で語るがお似合いで
お顔を見るのも憚られ
それでもお声をかけたらあなた様
訳も分からずこの野まで
さまよい出でていただいて

すべての夜が明けました
草取り農夫も消えまする
夏の火照りを消しなされ
間もなく刈取り農夫が参ります
実りを刈り取る大きな鎌を持つ
刈取り農夫が参ります

刈取り農夫が参ります


自由詩 刈取り農夫 Copyright 西天 龍 2010-09-07 23:52:07
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