洞穴墓
楽恵



台湾人がやっている置物屋で買った
誕生石にまつわるブレスレットを腕に巻いていたら
霊能者にさんざん罵倒され
軒下に巣食っていた日除けの蜘蛛
ジリジリ逃げる
堕胎した子を洞穴まで連れて行く
那覇の国際通りの裏手にある
入り口では黒ずんだ棒を持った番人が待っていた

せめてこの子だけでも
穴の中に隠してくれませんか?
琉球政府時代からの慣習によると
自然な死産の子でなければ
穴には葬れないのだ、という
先祖の墓はどうした
祖先代々の墓は
嘉手納の米国空軍基地の中にあって入れない
入り口に立ち尽くしたまま
まわりに雪が降り積もる
雪は降りに降り
あたりはまっ白に積もって
春にはきっと、溶けて透明な湖になる
そんな、短い冬でした

人が誰も見ていない事を見計らって
地下水に我が子の亡骸をそっと沈める
混血児だった
帰りは国際通りの人込みに揉まれ
やんばるの県境まで歩く道が遠い


自由詩 洞穴墓 Copyright 楽恵 2010-09-07 11:43:27
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