『耽溺の海』
東雲 李葉
舌を出す君は子供みたいに言葉にならない声を吐く。
触れ合う皮膚の温さが心地好くて握る指にも力がこもるよ。
波立つシーツに包まれ懐かしい場所に還るように。
二人このまま朝が来るまで沈もうか。
大きな目に映るはにかんだ僕の顔。
君の中を満たしていくような声を忘れる感覚。
深呼吸を繰り返し同じ息を共有する。
雫のついた指を舐めるともっともっと欲しくて。
ねだっていいよね。波を高めて溺れるように。
君をこのまま僕の掌で沈めたい。
吐き出す泡はどんな音を含んでいるのかな。
僕が君を包む奇妙な感覚。
酸素を求める口をそっと塞いでやる。
舌を出す君は子供みたいに言葉にならない声を吐く。