God Bless You
寒雪



TV画面から
無造作に飛び交う
紛争地域の凄惨な映像
脳内に映りこむ
絨毯爆撃を目の当たりにして
数ヶ月前
彼の地を訪れたことを思い起こしていた


そこにはまだ
戦車も戦闘機もなく
普通の人々が
いつものように営む生活があった
普段より近くにいた太陽が
額に汗を浮かび上がらせる
たまたま出会ったおばあさんと
持っていた扇子について話し込んだ
旅の記念にと差し上げたら
すごく喜んでくれた
代わりに彼女が首から提げていた
ネックレスをくれるという
交換出来ないと辞退したが
無理矢理ポケットにねじこまれた
別れ際
彼女が微笑みながら口にした言葉は
敬虔な教徒らしくて
その時は心に落ち着かず消えた


繰り返し垂れ流される惨劇を前に
彼女が口にしたフレーズを
画面に向かって発してみる
彼女は無事でいるのか
そう思った瞬間
TVに彼女が映り込んだ
メディアのインタビューに答えている
彼女の言葉は裏返って伝えられている
彼女はただ
毎朝昇る恵みの太陽に
感謝の祈りを捧げたいだけ
その思いを陰でせせら笑うのは
誰なのだろう


一週間後
停戦協定が結ばれて
紛争は一段落ついたらしい
彼女は元気でいるだろうか
冬の季節に積み木を崩した家で
雪の足音を聞きながら
それでもあの時眩しかった
微笑を携えながら生きているのか


God Bless You


何度も何度も呟く言葉に
一筋の涙


自由詩 God Bless You Copyright 寒雪 2010-09-06 07:42:21
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