わたし (ご利用は計画的に)
乾 加津也
わたしがわたしをいう
みどりごの茂みがでこぼこの洞穴に落ちこむ
そこで
太陽は負のみなもとを活着させてしめつける
「朝がこないよ母さん!」
ブイと灯台をひとつひとつつむぎ囲んだ海岸線で
葬送の儀があかるく響きわたる
(手綱ヲヒケ 棺ヲオロセ)
けものを食む けばだつ芝生にいろはいらない
まっしろなほそい根は恥じらいもなくまっすぐ延びひろがる
(航海日誌ヲクサラセル)
路傍が人を徘徊し
雲のうえで澄みきったモニュメントが足元を下から押しあげ
瞼の凍土で季節風が吹きすさみ
洋上を七巡すればみどりごの瀝青になれるよ 座礁するまで
(ホントツキアゲル桜吹雪ノヨウダネ)
おまえにもしくまれていた
ストレリチアの花から解脱するいくつもの仮面の目の洞穴 奥の
とびいる蛾が焼きつくされたい
あのうつくしい火炎
声帯の
茂みに生えでた二十一本目の鉤爪 断崖に
ケラケラと淫靡で鮮烈な一輪挿しの「薔薇」
は痺れ
は棘を噛みきる口腔に接続するデバイスとして
はなまえで鎖つながれるからもうわたしを
(オモイ ダセナイ 思想)
ここでは あこがれはそだたないの
日没にまた磔刑が執行される 経血の滝壺の
あちらがわに浮かんでみたくないか
あめんぼの渦をゆっくり描きながら
この昇降を愛して眠るみどりごを虐げる
慈善家ども
嘔吐臭にまみれながら巷の洞穴をパンパンに孕ませてやる
「おねがい 水のようにスポイル!」
たとえわたしといえども
わたしをいうものをわたしは無差別に容赦しない