ピノキオ
月乃助
( 乾いた木のままでは つらいのです )
( 秋がやってくるなら なおさら )
通り雨の大粒な なみだのような冷たい滴に
もうこれで 夏が終わるのを知りました
すぐにやってくる
温かな紅茶をありがたがる そんな季節が、
天からの慈雨 それは、
想いのすべてをいやしてくれる
だってとか
仕様がないとか言っては
迷いながら うそをついた夏
だから、木人のようにのびたはなを
不器用に削りながら生きてみた
小さな願いに
明日はきっともっとよい日がやってくると
ぎくしゃくした笑顔を向けながら
信じているわけでもないのに
自信のあるようなふりをして言う
糸を切った操り人形の選んだ道は、
遠くからする/うちからする、声に耳を傾け
自分の足元を確かめるように歩くこと
小さな自分への約束が
今度もうそになってしまわないように
はりせんぼんを手にしながら
そのとげを見つめたり
伝えたいことなど
掌にこんなにもたくさんあるのに、
差し出そうとすると 消えてしまうのをながめたり
樫の木でできたこの体は、
心があったらよいのにね
そうすれば、いつかきっと
人にだってなれるのですから
今はただ、
冷たい雨にうたれながら
少しのあいだ
人になれた時を 夢見ても
よいですか