絶語
古月
「The end of end」
いつも、夜が明ける頃には羽ばたいている、僕の羽。
(小さな卵の中の、予め雛鳥と記述された雛鳥)
いつも、夜が明ける頃にはふるえている、僕の羽。
だから僕は、日差しの下で自分の言葉を見つめることができない。
(真夜中の雛鳥は、羽ばたきを知らない)
血の通わない、語彙。
遮断、すなわち平穏
風は僕の墓場にも吹く
足元には、死語
(歓声がひびき
群集に蹂躙される
エクリチュール)
開放される青空、刻まれた時の、中心、イメージの殻は割れて、なにもかも、
およそすべての文字が死んだ日、
やがて、
言葉が蒸発し、無のイメージ、の残骸を、再生する、時間は失われた、彼我、中絶された亡骸、彼我
そして、文字で囲われた城壁のなかの、へいわもまた、
、
、
「彼女はおしゃべりをするのが好きだった。いつも、踊るように、歌うように、だれも見たことのない話をした。華奢な彼女にとても、とても似合いの。話題は、【The end of end】
。
。ひとみをとじたとしても、せかいはまばゆいひかりのこうずい。虹を見たことのない僕の、虹色の雛鳥は、うまれない、子宮のなかの天はいつまでも。投影される言語とは、蓄積された言葉から照射されるものなんだ。
「Cauldron」
凪いだ世界のまんなかで、忘却されていた羽がはばたくとき、本棚、本棚は
塹壕、
戦火に焼かれる、蔵書、の渦、ひかりのした、ひかりのしたに血が通う!
僕の世界は、恐ろしく陳腐な、呟き、のはじに生まれたためいき、だから、「言葉は燃えても、
悲鳴は燃えない」
風は流れなくても、雛鳥は身を踊らせて、飛び立つ、飛びかう言葉、「The end of end」
彼女の言葉は、僕の知らない言葉で語られている。退廃した異語、それが僕だ
、
ひかりがまぶしい、ね、と、それが僕の、最後の、記述、だっ、た
僕には分からない
分からない
「Iconoclasm」
ひとみをうしなってもみえるものがある、みえないものをえがいている。脳髄、くち、ち。ちにくがほどけて、ほねがくだける。きおくはあいまいにあいまいに加速する言葉が溢れでた虚ろな眼孔の読んだ単語をあてはめた「The end of end」、「The end of end」と記す幼き、僕、と、見えなくなったひかりの無色の音階、目は見えていてもみようとしない脳髄、おさないころにすりこまれた文字が、言葉。雛鳥は殻を割れずに死んでいたのよ。で、もうこんな耳いらない。卵。らんしと静止、凪ぎ、なぎのまんなかで、風は吹いているのにこんなにもしずか、しずかに、しずかに死んでいたのよ、それでも、くちのきけない雛鳥は、飛翔、し、殻を破って、くろい、くろがねの、ああ、「The end of end」、おもいだせない深淵のむこう、言葉を忘れた言葉の淵に鳥は歌うのさ!
死んでしまえば皆おなじ、おなじ死骸の上に、僕の詩も死ぬ。子供部屋がほしくて、叫んだ、叫ばざるをえなかった言葉、も、唱、も、死骸のまえに、ねむる。ねむる僕は、幾重もの夢を見る。ゆるやかなカーヴをえがく水平線。そうして、空と海と大地が生まれ、沈黙、まぶたのうえで、かなしく、目覚めるといつも、執拗にあかるい
「The first beginning」
息をとめて、瞼をおろせば、いつもそこに言葉があって、羊水も言葉から生まれる。「おんせいとはきじゅつできないから、ことばでしるしてやれない。
熱」
言葉にうまれた雛鳥は、真夜中に羽ばたきの練習をしない。
予め、言葉は風を孕んで、羽、羽ばたく、
本棚は、やはり、塹壕だった。平和な僕のためだけに、与えられた残光の、羽。記憶をたどるための暗号が、誰も使わなくなった言語で、瞼の裏に刻まれていく。あのときのように。彼女の、華奢な彼女は、いまうたっているのか。小さな羽のような。すべて、およそすべての喪失、生誕、詩句に覆われた、僕の、母胎、なだらかな鼓動、行方の知れない彼女、書物をめくる、言語を、めくり、羊水、陽の、陽をとざす、くらい、深淵、
記憶、
おもいだす題名は
いつもいつも、
「The end of end」、
「The end of end」、
その日から
戦争は絶えず、
指折り数えた、
影踏み。