少年よ、働くな
はだいろ

少年よ、きみは、決して働いてはならない
労働するなかれ
きみの魂をきみならしめる何ものかのためのほかには
落ちているパチンコの玉に映る空に
きみの希望をすべて投げかけよ
博打をうて
冬に備えてはならない
遊べ
何もするな
ただし本気で何もするな
女を抱け
血を売れ
身銭を切れ
親を裏切れ
家を出ろ
優しくなるな
けっして身のうらがえるような孤独のためのほかには
誰にも頭を下げるな
誰の下にもつくな
そして誰の上にも立つな
飼い主を間違えた犬のように
能面で誰かの価値を決めつけてはならない
働くな、
食べ物や着るものや屋根の下で眠るためには
働くな、
名刺や肩書きや世の中の眼のためには
想像するんだ、
世の中など、もっと素晴らしい世界の影にすぎない
信じるんだ、
政治家など、きみの詩の声を枯らすことさえできない
沈黙しろ、
ほんとうの言葉が生まれるまで
誰も愛するな、
ほんとうの愛すべきひとに出会うまで
ほんとうに愛すべききみじしんになりきるまで
いつも答えは
風にきけ
こころに聞け
いつかきみのことを騙したやつを忘れてはいけない
そしてほんとうに嘘をつくやつは
けっして表には出てこないということを
けっして忘れてはならない
少年よ、
きみはきみの命の行き先で
この世界を切り裂いてゆくんだ
だから、きみは働いてはならない
職業はハローワークなんかにはない
学ぶことは赤本なんかにはない
きみは決して働いてはならない
労働するなかれ
きみの魂をきみならしめる何ものかのためのほかには
きみの魂をきみならしめる何ものかのためのほかには






自由詩 少年よ、働くな Copyright はだいろ 2010-09-02 21:11:56
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