蒼月
Akari Chika

あなたが
後ろからそっと私を抱きしめる
せせらぎが流れるように
肌を滑る冷たい腕

蒼白い月明かり

私はまるで
羽衣を纏った 一晩の天女

シーツの波間を漂う蓮
水草の絡まる細い足首

中華楽団
悠久の弦の

太鼓を擦ると 重なる旋律

二人を包むもの全て
影の中で織糸を紡ぐ

私とあなたが
揺籃で眠る間に

緑茶の葉を詰めたお香を焚いて
香ばしい蒸気に潤う

岩肌を削ったベッド
竹筒に挿した鈴蘭

あなたが
確かめるように私の唇をなぞる
舌の谷間から
桃の花が咲き乱れる

藍白い月明かり

水墨で描かれたのは
ゆらり沈む 夢枕

簾窓から檜風

昼光色ちゅうこうしょくの町並み尽きて
月夜烏の浮かれ声

あなたの想いにたゆたえば

互いの距離が
少し嬉しい

さらわれて
さらわれたくて
さめざめと泣いていた

私を叱って
黒髪を櫛で梳くあなた

私はまるで
羽衣を脱いだ 一晩の天女


自由詩 蒼月 Copyright Akari Chika 2010-09-01 19:57:37
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