蒼月
Akari Chika
あなたが
後ろからそっと私を抱きしめる
せせらぎが流れるように
肌を滑る冷たい腕
蒼白い月明かり
私はまるで
羽衣を纏った 一晩の天女
シーツの波間を漂う蓮
水草の絡まる細い足首
中華楽団
悠久の弦の音
太鼓を擦ると 重なる旋律
二人を包むもの全て
影の中で織糸を紡ぐ
私とあなたが
揺籃で眠る間に
緑茶の葉を詰めたお香を焚いて
香ばしい蒸気に潤う
岩肌を削ったベッド
竹筒に挿した鈴蘭
あなたが
確かめるように私の唇をなぞる
舌の谷間から
桃の花が咲き乱れる
藍白い月明かり
水墨で描かれたのは
ゆらり沈む 夢枕
簾窓から檜風
昼光色の町並み尽きて
月夜烏の浮かれ声
あなたの想いにたゆたえば
互いの距離が
少し嬉しい
さらわれて
さらわれたくて
さめざめと泣いていた
私を叱って
黒髪を櫛で梳くあなた
私はまるで
羽衣を脱いだ 一晩の天女