夏の終わり
中原 那由多

チリンリン、と揺らめく風鈴
遊び場の向こう側は忙しなく
夢から覚めてしまったような淡い切なさが

心ここに在らずと渦巻いた

雲は黒く立ち往生
夕立は期待はずれ、流れ落ちた蜃気楼は
次は何処へと向かうのだろうか


知らぬ間にかけていた色眼鏡を通して
見てきた景色はどれも繊細で
触れることさえ難しかった
壊れかけの教室がついに崩れることはなく
幾度となく足を踏み入れていた

右奥の席に座る彼らはもういない
みんなみんな、脱皮してしまったのだから


果てしない水溜まりの上
笑い声だけが響いている
コンパスを失った濃い霧の中
難破船にすがり付くようにして
騒音から避難していた
くしゃみから始まるものが見当たらず
小細工することを諦めた


目が覚めても夢はもう少し続く

期待と憂鬱を鞄に詰め込んだ少年少女は
一体何を見て歩いていたのだろうか

ありふれた毎日が嬉しかった
変わりゆく世界には落胆した
変わらない世界にも呆れていた

彼らの頼みを引き受けて
遠くへ、遠くへ行ってしまおう




自由詩 夏の終わり Copyright 中原 那由多 2010-09-01 10:07:04
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