一瞬の影
こしごえ

水晶の心臓をもつあのこの
心音は途切れずに
星雲で脈打っている。まなざしは
林の陰のように微笑んだまま
朝食をいただいている
鉄塔の影はのび
山際の空が紫にいろづく
せせらぎを
さかのぼる果実は散って咲く
あのこの羽は陽に透けて
(私が死んだらこの影は
どこへ行くのだろうか)
空を
みつめるひとみはどこまでも黒く澄み
夜になったのもしらず

水平線に直立する鏡の雨
(一瞬まえの私と
いまの私はとうぜんちがう私だ)
かられた草が枯れてゆく
しゅわしゅわと声を上げながら
山脈のうかびあがる
青白いよこがお

ある
正午のサイレンは
永くながい
さざなみにあらわれる
しろい素足のふむ
真砂が
鳴く
カモメの食事
    視線の先の
空は
真っ青にはれて降りしきり
しみて来る

変わらぬ言葉をかみしめて
私よりも長生きしてくれとあのこへのべた。










自由詩 一瞬の影 Copyright こしごえ 2010-09-01 05:25:33
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