決別のひと
恋月 ぴの

花はどこへ行った

なんて問い続けるよりも大切なものが私たちにはあった
それが今の生活であることは否定できないし
ひとの望むものなんて目に見えるものに他ならないのだから

ありふれた結婚生活に憧れてた
誰しも安逸な幸福感に満たされていたい
例え明日が約束されていないとしても

それだから私たちは
花はどこへ行ったなんて問うこともなく
朝9時始業だとしてもそれ以前には職場へ就いている

それを嘲笑う権利は誰にでもあるし
今すぐにでも投げ出すことはできるけど

満ち足りていたい

そんな心の渇きはどうしようもなくて
あれこれと文句言いつつ
今朝も遅刻しないかと早足に歩む

長く曲がりくねった道の終着点が見えてきて
今以上の幸せは望め得ないとしても
私たちは歌うことを忘れたりはしないだろう

でもそれは花はどこへ行ったと問い続けるような歌ではなく
ごくありふれた他愛もない歌だったりする

そしてそれだからこその人生であって
半ば諦めつつも
絶望よりも仄かな期待を胸に抱いて
今日って一日をやり過ごす









自由詩 決別のひと Copyright 恋月 ぴの 2010-08-30 19:14:42縦
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