決別のひと
恋月 ぴの
花はどこへ行った
なんて問い続けるよりも大切なものが私たちにはあった
それが今の生活であることは否定できないし
ひとの望むものなんて目に見えるものに他ならないのだから
ありふれた結婚生活に憧れてた
誰しも安逸な幸福感に満たされていたい
例え明日が約束されていないとしても
それだから私たちは
花はどこへ行ったなんて問うこともなく
朝9時始業だとしてもそれ以前には職場へ就いている
それを嘲笑う権利は誰にでもあるし
今すぐにでも投げ出すことはできるけど
満ち足りていたい
そんな心の渇きはどうしようもなくて
あれこれと文句言いつつ
今朝も遅刻しないかと早足に歩む
長く曲がりくねった道の終着点が見えてきて
今以上の幸せは望め得ないとしても
私たちは歌うことを忘れたりはしないだろう
でもそれは花はどこへ行ったと問い続けるような歌ではなく
ごくありふれた他愛もない歌だったりする
そしてそれだからこその人生であって
半ば諦めつつも
絶望よりも仄かな期待を胸に抱いて
今日って一日をやり過ごす