歌声
……とある蛙



その大いなる人々は
歌声と一緒にやってくる。
峰峰に雪を戴いた白い山並を越え
覆い隠すような人数で
その歌声と一緒にやってくる。
誰かのために歌う訳でも無く
止むことのないその韻律は
傷ついた多くの人達の
太古から続く苦しみを癒すために
歌の溢れた空間に横たわる 数多の人々
希望の失われていない その人達とともに
歌とともに膨れ上がった信頼を頭上に掲げたまま
笑顔で歌い続け
それから希望の一歩を踏み出す。



その大いなる人々は
歌声と一緒にやってくる。
青い海原の彼方から白い波頭に乗って
海面を覆い隠すような人数で
その歌声と一緒にやってくる。
誰かのために歌う訳でも無く
止むことなくその韻律は
浜辺に横たわる多くの遺体の魂の
太古から続く苦しみを癒すために
歌の溢れた空間に漂う 数多の魂
地上に漂う魂を昇天させるための癒しの韻律を
歌とともに膨れ上がった救済を頭上に掲げたまま
笑顔で受け入れて歌い続け
それから天に向かって上って行く
希望の一歩を踏み出す。



その大いなる人々は
歌声と一緒にやってくる。
遙か向こうの地平線の彼方から
地上を覆い隠すような人数で
その歌声と一緒にやってくる。
誰かのために歌う訳でも無く
止むことなくその韻律は
諦め掛けた多くの人たちに
待ち望んでいた勇気を与える。
歌の溢れた空間にふさぎ込み膝を抱えて座っている数多の人たち
太古の昔に失われた勇気を取り戻すため、
歌とともに膨れ上がった希望を頭上に掲げたまま
笑顔でそれを受け入れて歌い続け
それから明るい一歩を踏み出す。


自由詩 歌声 Copyright ……とある蛙 2010-08-30 14:32:23
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