天使ちゃん1回100円
真島正人
コンクリートが濡れていた
僕は朝からの買い物でせわしなく移動していた
掌で抱えた袋には
甘い匂いのストロベリーがたくさん入っていた
老婆が向こうの道路で
子供の手を引いていた
子供は小さすぎて女の子なのか男の子なのかわからない
空は晴れていた
雨上がりだから
そんな時急にアスファルトから
手が伸びてきて消えた
天使ちゃん
1回100円
許してくれよ
と
どこかから声が聞こえてきた
望みは
かなえられるためにあるのではないので
いつもそれは浮遊している
口や目から
体の中に入り
しばらく光って
黙って出て行く
一度光った人の
残りかすが天使なら
よかったのにな