ジャスタ モメント
ヨルノテガム








 捨て猫あいさつしない

 ビール缶から雨水こぼれた

 扇風機の首が折れる

 夜が地べたを這っている

 高層ホテルが墓石

 夜中が地下を新たに作り出す

 抑揚のない笛が流れた

 信号機は砂時計のように意味なく顔を変え

 環状線で巡る都会の動脈は

 一つの四角い小部屋の末端で

 ひっそり静脈へと入れかわる

 蝉の羽音が火薬をこぼし花火を空へと打ち上げた

 猫紳士は二本足で会釈し

 浮浪者がビールのプシュと開ける音に溺れ死ぬ

 夜空を覆いつくす扇風機の羽が回り

 月がパラパラ漫画に跳ねて飛んだ

 こんな夜はもういらない

 こんな夜ばかりじゃ

 若者の人影は木々の森へと隠れ消える

 昼の環状線で眠る冷たい電車の空席に

 暗い若者はよこ笛を吹いて無視され続けた

 抑揚のない

 線のような

 音を吹いた
















自由詩 ジャスタ モメント Copyright ヨルノテガム 2010-08-29 14:18:41
notebook Home