弱
薬堂氷太
朽ちたこの身体に 縫い付けているだけの
手足で今日も 街を這うよ
ギリギリのところまで行って 何も無かったら
それはそれで いいのだけれど
ただ体だけが疲れていて
唯一、身体と繋がっている頭で 考えたなら
戻るには 重荷になるから
手足を 置いて行きました
ところが これじゃ這うことすらできず
ただ目線の先 暮れなずむ夕日と
睨み合っているだけで
眼をそらしたくても そらせない
それは現実から逃げるなとか言う
誰かの鬱陶しい説教のようで
どうしようもないから 僕は涙を流しました
それを 知らない子が見ていて
哀れに思ったのかは 知らないが
身体から離れた 手足を抱え
丁寧に縫いつけてくれた
そして駆け足で僕の前へ
何かを期待する目で 僕を見ている
だから
乱雑だけど 温かいような縫い目は
すぐ 解けそうだったけど
僕は 一生懸命 夕日を背に
這いずりまわったんだ
君ははしゃぎながら
手拍子で 僕を導く
時々、時計を気にしながら
乱雑な縫い目は 解けて行き
1つ、1つ
僕の後ろに 手足が置き去りにされていくけれど
それでも 僕は
縋るように 地を這う
やがて手足は 全部無くなって
君は半ベソかきながら
晩御飯の匂いにつられて どこかへ行ってしまった
うつ伏せで 顔だけ前を向いている 僕
夕日を背に細長くのびる 影の先に朧月
そして 僕は
やっとギリギリのところまで来たんだ
結局そこには 何も無く
ただ 鼻を突くような晩御飯の匂いがするだけだけど
ゼリーのような脳みそが溶けていく感覚を
感じながら 僕は 何を思うのだろう
そうだね
最後に あの子にもう一度会いたいな