めぐり きざみ
木立 悟
家を呑んだ水の明るさ
羽も来る 声も来る
何もかもが
無言のまま来る
言い返せない風が集まり
壁の一部を砕いては持ち去る
こぼれた文字やかたちから
姿の言葉 起ち上がる
樹に求婚する鳥のかたわら
低い天の緑がすぎる
水の蛇 水の蛇
自らの波を見つめて動かない
息が吹き荒れ
夜に刺青を残す
渦が歩く 四ッ足たちが
陰を歩く
ゆっくりとしたかけらを見る
底へ底へ向かう鏡
青に重なる青を見る
常にもうひとつに触れる夜
風を呑んで 風を呑んだ
縦の踊りの光を着た
数は無くなり 数は有り
現われたひとつを抱き寄せた
ひとりがひとりをまといながら
二重の径を歩むとき
こがねの夜の軌跡は白く
樹の葉の上に言葉を残す