酔っ払い
森の猫

めずらしく
たったビール2本で
酔いが足をからませる

まっすぐ歩いているつもりが
どんどん道の
真ん中に寄っていく

ボワンとした視界に
でんとトラックが
踏み切り待ちしている

”轢いてくれ!”
まわらぬ口調で叫んだ

”ヨシナサイヨ!”
迎えに来た娘が
小声でつぶやく

アタマの上の外灯を
”コレは月カナ?”
 えへへへ・・・・

笑いながら
都道に大の字で
横たわる

熱をふくんだ
アスファルト
ぐるぐるとカラダが
動いているみたいだ

手を引っぱられた
こんな田舎の夜中でも
車は何台か
行き過ぎた

”死にたいの
 腐る前に
 死にたいの!”

今度は大声で叫びたくなった

本音だ
アタシの脳が
言わせた
ホンネ


そんなことを繰り返し

エレベーター前の
玄関に着く

無意識にサンダルを
脱ぎ
ゴツンと
廊下に倒れこむ

猫たちが
出てきて

遠巻きに
あたしのことを
見ている

”死にたいの
 死にたいの・・・”

まぶたが重くなる
アタマの下に
ヒンヤリしたものが
あたる

娘が
アイス枕を
置いたのだ

”ありがとう・・・・”

ココロのなかで
返事をして
酔ったジブンに酔っていた

”死にたいの・・・
 ありがとう・・・”


自由詩 酔っ払い Copyright 森の猫 2010-08-28 00:01:31
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