そびえたつ邂逅
乾 加津也

「まるで地層」

頭上を滑るコンテナトレーラ層

さらに上空をよこたわり蛇行するモノレール層に見下げられている
地下層はたぶんなにもない
原っぱ
交差点にできたとうめい角膜のレイヤーだろう

われらのステッキ
超軽量スニーカー
ベビーカーその他
ハイヒールのお天気お姉さんのあたりが巨大な水晶体を連打する
ストラップ携帯も
密売フォリナーも
おかまバーのまゆみも殴打する

 Bugs rooted in hyaloid canal.
 (硝子体管に巣食う虫)

他辺では
カメレオンもどきのクロスバイクとバイク便がいて
乱反射するベンツとハイブリッド(二つの動力)が
これからくる数秒後の「いっせい」に殺されたあと
ふるさとの田舎のあぜ道でタバコをふかしている

 信号が「よくせい」から
    「しょうれい」にかわった

わたしの出番だ
歩道からまたいで白い梯子模様に足を踏みいれると
かるい段差は
波打ち際の夏の避暑地のようにつめたく
わたしのくるぶしから包みあがってくる
気をとり直して
マンボウのようにぼんやりすすむ
堰を切ったように
一目散に入り乱れるスカイフィッシュたちの袖口から
するすると赤い紐が垂れ流されてみるまに
巨眼が充血し
みずみずしく腫れ上がる
わたしがやっと中央付近にさしかかったころには
瞳孔はしなだれ
容赦ない心拍と炎症でまばたきをせずにはいられなくなった
弓なりの目蓋がとげ鞭のように押し寄せ
まつげに抱きついた雑魚どもを空高く振りはらった
しゃぶりつくす舌のような味覚がやむと
白昼もろとも涙となってすべてを押し流したあとは暗い原っぱ
わたし以外のわれらを
(なぜとりのこすというわたしの祈りさえも)

きこえない闇から首をもたげ
塔のようにかたくそびえたつ龍はわたしを見返している
 マンボウのまなざし・・・
ありったけをそのまま
「(オマエハ)ダレ?」という言語で
いまもたったひとつの視線をつき返している
嗚呼スミマセン申し訳ございませんと
ひたすら口だけパクパク痙攣させてわたしは
生まれ?かいのち?かを懺悔せずにはいられない
(あたまのなかをスミレがよぎる)


◇ ◇ ◇


その立体交差点の
やたらに長い横断歩道で
やっと中央付近までたどりつくときには
いつも


自由詩 そびえたつ邂逅 Copyright 乾 加津也 2010-08-26 11:54:16
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