薄い胸
森の猫

久しぶりに酔いつぶれた

たった瓶ビール2本で

その日はなにか その人に
無意識にメールをしてしまった

新宿で待ち合わせて
1時間だけ飲む

何年ぶりだろう
いっしょに飲むなんて

もうその人はすっかり
できあがっているのに
ハイボールなんか
頼んでいる

あたしはまだ飲んでないから
ビール!

本音を吐かせたかった
言葉の少ない人だから

飲まなきゃ
酔わなきゃ
こっちも吐けない

1本と半分飲んだところで
くるくる頭が
回ってくる
思考カイロが崩れていくのがわかる

時間切れ
居酒屋のエレベータでも
ふらふらと立つのがやっと

店を出て
手をつないで
駅へと歩く

めずらしく
あたしに 歩幅を
合わせてくれている

もう席はいっぱい
さして混んでもいない
入り口付近によりかかる
ふたりとも酔っている

あたしは
恥ずかしいキモチなどなく
その人の胸に
顔をうずめた

口紅がつくことも気にせずに

薄い胸
でも安らいだ 眠い・・・

電車の揺れに倒れそうになる
あたしの
肩をやさしく抱く人

準急だ
20数分が
長く感じられた

キモチいい
夢ごごちだ
ずっとこのままでいたい

最寄り駅のアナウンス
ぴったりと帰りエレベータ地点に着く

手を繋ぐ
肩を抱く

帰り道
ふたり・・・

薄い胸
薄い胸

あたしだけの
薄い胸


自由詩 薄い胸 Copyright 森の猫 2010-08-25 15:39:11
notebook Home