家が嫌いだと言うあなたへ
幼虫バニラ

嗚呼、やけに綺麗だな
そう思う星の少ない空を見上げて
とぼとぼ歩くのは
私とあなた、同じでしょう



  何してたの、
  遅いじゃない、



しかめっ面したあなた
汚い言葉で返すあなた


私はね
冷たい金属音で開ける部屋
何も言ってくれないんだよ
静まり返った空間は
本当に
本当に静かで

もうそれにも慣れたのだけれど


あなたはどうかしら




   もう消しなさい
   体に悪いでしょ



やめられない
リアルから離れた世界


私もあなたも同じでしょう



取られるとでも思ったのかしら
あなたはまた真っ黒な言葉を呟いては
夜を明かしていく


私はね
誰からもとがめられず
誰からも心配されず
疲れた体を起してひたすら画面に向かって
単調な言葉を繋いでいるの
本当はあなたのリアルを焦がれながら



   どうするの将来、
   何もしていないじゃない、



何もしない
考えたくない

私もあなたも同じでしょう



耳をふさぎたくなる、と
あなたは言って部屋を飛び出した
優しさに満ち溢れた言葉を
大嫌いな言葉だと
自分で変えて背に受けながら



私はね
何をすればいいかもわからず
一緒に机を囲んで話してくれる存在もなく
出るはずのない答えを
ひとりで考えているんだよ



うるさく言われること
心配されること
怒られること


あなたが大嫌いなこと
全て

私が今
欲しくて
欲しくて
もう一度
もう一度、ずっと、聞いておきたいことなんだよ



ひとりじゃないこと



ドアが開いていること


おかえり、って


開いていること



もう一度
考えて


もう一度、あなたの「嫌い」を
考えて


自由詩 家が嫌いだと言うあなたへ Copyright 幼虫バニラ 2010-08-23 02:14:28
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