ジャンルを超えて−けいおん!Humming Birdのことなど
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 最近、『けいおん!』というアニメにはまっている。主人公は?放課後ティータイム?という名のバンドを組んだ5人の女子高生たちで、アニメは彼女たちの学園生活を描いている。笑いあり、涙ありのガールズ・バンド・ストーリーは海外のアニメファンからも熱い支持を得ている。

 この5人の女子高生キャラにはそれぞれの性格を反映した歌曲が作られている。それらは?キャラソン?と呼ばれていて、各キャラクターは自分のキャラソンを歌っている。

 その中の『Humming Bird』という曲が気に入って、このところ毎日聴き込んでいる。先日、Youtubeでこの楽曲のベースパートを演奏した動画が投稿されているのを観た。投稿者は医療に携わる「アラサー」の男性で、私は彼からこのベースパートのTab譜を頂いた。

 また次の日、今度は音楽編集ソフトを駆使してこの楽曲からバッキングを消去し、ボーカルだけを抽出した音源の投稿に出会った。私は?アラサー氏?にこのボーカルにアコースティクギター1本の伴奏を付けてはどうかと提案した。すると、彼はそのアレンジや演奏の容易ならざることを断りつつも、数小節にわたる演奏を録音し、その音源を私に進呈してくれた。

 この楽曲は非常に複雑なコード進行とファンキーなリズムに乗せて、可憐で生真面目な歌詞を歌い上げるという、ふつうはなかなか成功しそうにないことをさらりとやってのけていて、?ムギちゃん?という、たいへん性格の良いお嬢様のキャラソンとして百点満点の仕上がりになっていると言える。

 ただ、私は、この歌曲はガットギターによる伴奏において、オリジナルを凌ぐ魅力を発揮するものと予想した。そしてなんとしてもそれをこの耳で確かめたくなった。そこで、アラサー氏にカマをかけたのだ。

 私は彼がフラメンコギターを被せた?アンプラグド・ハミング・バード?を一聴して鳥肌が立った。「♪光り輝く奇跡なら ドキドキの向うに…」という歌詞の頭のコード付けはEメジャーでも問題のないところだが、オリジナルではベースが9thを弾いている。ベースラインをコピーしていたアラサー氏は、おそらくギターでもこの9thの響を生かそうとしたのであろう、E B F'# G'#(B') B G'#(B') というアルペジオをプレーし、Eadd9という響きにしている。そしてこの9th(F'#)が泣かせるのだ。アコギの甘い響によく合っていて、どこか南欧な感じがする。切なく、おしゃれで、温かい。

 ジャズ、ロック、ファンク、いろんなものがチャンポンになって作り上げられた楽曲だが、そこで発想された9thの響は、同時にクラッシカルな装いにおいても味わい深い効果を発揮することが確認された。

 してみると、ジャンルの区別など、あまり意味をなさないわけである。


散文(批評随筆小説等) ジャンルを超えて−けいおん!Humming Birdのことなど Copyright A-29 2010-08-23 01:44:42
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