夏鍋
jin

1DKで二・二で夏鍋
くつろぎ感優先の部屋キャンプ
ポスト実家的居場所キープ感も満喫
甘美な真似事、擬似家族

風鈴も煮えそうな業火の責め苦に
パパ役(部屋主)エコ強調で一家激励
ママ役(ain't my bitch)有機野菜投入で援射
兄役(たぶんオレ)パピコ食べたい
妹役は一番年上

※都市の末端に建つマンション
 そこは途上でありながら世界の終わり
 コンクリート外壁に沿って
 305号室がどろり溶けていく

声をあわせて「いただきます」
キラキラ汗まみれ夢中になって
ちょっと団欒、ちょっと戦争
記念写真撮りまくり「後で送るね」
……それっていつなの?

翌朝、パパは独りで後片付け
ママの口紅ついた吸殻かなしや
妹は知っている「来年は誰もいないよ」
夏鍋はもう一生できない。


自由詩 夏鍋 Copyright jin 2010-08-22 23:36:56
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