ts,ts,ts,,,
竜門勇気


飲み込みが早くて助かるよ


何度目かのメッセージは私の社内メールに届いていた
見過ごしてた、忘れてたなんていえない
こんなメールが、PCが使い物にならなくなるぐらい長い間眠っていたなんて

宛名を頼りにかけた保護のアイコン
毎日読みきること無く積み重なっていった封書の束
カビ臭くて少し甘い想いが
硬いクリックの音でわたしの中に広がる

飲み込みが早くて助かるよ
うそだね
こんど、一緒に飲みにでも行こうよ
むりだよ

でも少しだけ
笑顔にはなれたよ

あなたはわたしの作った
不恰好な精霊馬で
今年も会いに来てくれたね?

わたし、飲み込みなんて早くない
まだ次のメールを待ってるみたい
人差し指でキーボードを叩いてるから
時間がかかるんだよね

誰もいなくなるまで
今日は残業できるから
少しだけ泣いていても
あなたにしかわからない
秘密を作ろう
さあ、わたしは泣いちゃうよ
涙で最初で最後のメールが溶けちゃうぐらい
ふたりの最後の秘密にしよう

夜空は、星と星に燃えている
わたしは、最初の秘密を体に宿したまま、ただ泣いている


自由詩 ts,ts,ts,,, Copyright 竜門勇気 2010-08-21 00:58:13
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