今日一日
小川 葉



峠を越えると
雨は止み
雲の隙間から
一筋の
光が降りていた

神様が
父を迎えにきたのだ
私を待たずに

もう何もない
父の体を抱く
まだあたたかいのは
生きていたからだ
私を待って
生きていたからだ

父と二人
寝台車に乗る
病院から家まで
日が暮れた
地平線がまだ赤い
とてもまだ赤いのだ

空の向こうで
泣いている
今日一日が終わらない

いつまでも
閉じてくれない
父の目を
今は涙越しに見ている



自由詩 今日一日 Copyright 小川 葉 2010-08-19 00:37:23
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