ぼくは遠い火になりたかった
ホロウ・シカエルボク




ぼくは遠い火になりたかった


ビルのかげや
山のむこうで
ちらちらと


ときおり
消えたみたいに見える


ながくながく燃える遠い火に


それを
めざわりに思った誰かが
消そうともくろんでも
どこで燃えているのかわからない
だれが
つけたのかもわからない
そんな
不明だらけの
消すすべのない火


照らすでもなく
知らせるでもなく
ただなにか
気まぐれのような目的で
燃えている
遠い火


あの火の意味が
きみには見えますか
ぼくには判ったんだ
たんたんと燃える火は
ただたんたんと生きていることを
ひとりごとのように
伝えようとする火だと


ぼくは
遠い火になりたかった
雨が降ってもやまない
かみなりが落ちてもひろがらない
どんな原因にも寄り添わない
スタンドアローンな
たんたんと燃える火


もうこれ以上
窓の外を見るのはやめよう
もうこれ以上
眠れない時間に名前をつけるのはやめよう
ぼくは光源とはちがう火を手に入れて
ぼくだけの方法をつかってともして見せるのだ
それを何と呼べばきみに伝わるだろう


ぼくは
窓の外を見ることをやめた
その火は
てのひらにあった





自由詩 ぼくは遠い火になりたかった Copyright ホロウ・シカエルボク 2010-08-18 23:06:30
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