探偵ー朔太郎さんに捧げるー
……とある蛙
(暗転)
して突然明るくなった部屋には
一体の死体
もちろん部屋には内側から鍵が掛かっており
完全密室殺人事件
窓枠の中の夜空には
取って付けた様な満月
(なぜ夜なのだ)
鍵を壊して室内に入った探偵は
当然のようにチェックのハンチング
セオリーどおりに巨大な虫メガネ
思慮深げに死体を見つめる。
絞殺死体だ
首に鬱血した縄状の跡
チアノーゼ状態
探偵は徐おもむろにパイプを吹かす「主観的真実の表現は他の者が客観化することによって初めて詩になる」
(いいのかい、現場で!)
すべての鍵は閉まっている
窓の外は垂直な壁面
どこにも手掛かりは無い。
被害者は人付き合い良く
人から恨まれたという噂を
聞いたことは無い。
となぜか制服を着た警察署長
(現場に署長かよ)
警察官が忙しく入れ替り立ち替わり。
署長は探偵に推理を尋ねる。
徐(おもむろ)に探偵はパイプを口から離し
しばしパイプの感触を手で楽しみながら
「ここにひとつ被害者に死んでもらわなければつまらないと思っている者がいる。」
署長はふんふん頷く
「動機を持つ者がいるか」
探偵は今度はパイプを吹かす
そしてさらに続けた
「その者たちはこの部屋が完全な密室でも容易に犯行に及べる」
署長は意を決して尋ねる
「それは誰ですか?」
探偵は大声で
それはこれを読んでいるあなただ。
(暗転)
「主観的真実の表現は他の者が客観化することによって初めて詩になる」
アレンギンズバーグ