熱帯夜の夜 
番田 

木に見ている 帰り道の暗い羊と
群れに 遭遇する
車で走っている時 私は
小山の向こうに いつも 
手に 銃など持ち合わせてはいないのだが 一本が
遭難者の旗が 立っている 一本の旗が
誰かだというわけではないが まるで長く伸びて
のろしのようにして 風の中になびいている
それは 一本の
私の旗なのだろう ポケットには もう一枚の
片方には トマトがある 一個のコインと
白い紙が入っている きゅうりを買った時のものだ
ひどく 生活にいつも
あのときは 貧窮していて 肉も魚も買えなかったものだ


夜の中に 居場所を
橋の下から探して ひとり歩き回った
小波の姿を想像しながら
頭で シャツを
腕時計の秒針の姿を私は想像し 風に
手を振って揺らしながら帰った 



自由詩 熱帯夜の夜  Copyright 番田  2010-08-17 01:36:36
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